今回は私が愛用しているオーディオプレイヤーのAstell&Kern製A&norma SR35を記事にします。


SR35は、Astell&Kernのプレミアムなサウンドをコンパクトサイズで楽しむために誕生したシリーズ。
一言でいうと…
SR35は「上位機種の心臓部(DAC4基とアンプ技術)を、極限まで小さなボディに詰め込んだ欲張りなプレーヤー」です。
CS43198 Dual/Quad DACスイッチングモードとゲイン切替機能搭載
新世代アンプ技術と最新UI採用で長時間再生と高出力、S/N比130dBを実現
SR35の音質と特徴
A&norma SR35が「コンパクトなのに上位モデルに肉薄する音」と言われる理由は、単なるスペックアップではなく、複数の独自技術が組み合わさっているからです。

この機種の音質に直結する大きな特徴を4つに絞って解説します。
1. 「Quad DAC」構成による圧倒的な密度
SR35は、シーラス・ロジック社の高品質DAC「CS43198」を4基搭載しています。
- メリット: 1基や2基の場合と比べて、音の密度(情報量)が劇的に向上します。
- デュアル/クアッド切替: 設定で2基(Dual)と4基(Quad)を切り替えられますが、Quadモードでは音の立体感とパワーが格段に増し、ボーカルがより生々しくなります。
2. 独自技術「TERATON ALPHA」
Astell&Kernが長年研究してきた究極のサウンドソリューションです。
- 設計の肝: 「効果的な電源ノイズ除去」「効率的な増幅」「歪みの極小化」を一括で管理する技術です。
- 音への影響: 背景がピタッと静まり返るような「静寂感」が生まれます。これにより、女性ボーカルの消え際の余韻など、微細な音がはっきりと聴き取れるようになります。
3. 新世代のアンプ設計と高出力
SR35はアンプ回路そのものが一新されています。
- 高解像度かつパワフル: バランス接続時に最大6Vrmsという高出力を実現しながらも、音の繊細さを損なわないのが特徴です。
4. 4.4mmバランス接続への対応
SRシリーズとして初めて、標準的な4.4mmバランス出力を搭載しました。
- セパレーションの向上: 左右の音が混ざりにくくなるため、ステージが左右に広く感じられます。
- ノイズ耐性: 外部ノイズに強くなり、よりクリアで力強い伝送が可能です。もしPARAを付属のケーブル(あるいはリケーブル)で4.4mm接続していれば、SR35の真価を最も引き出せている状態です。


SR35デジタルフィルターの特徴
A&norma SR35(搭載DAC:Cirrus Logic CS43198)に搭載されている4つのデジタルフィルターは、音の立ち上がりや余韻の「わずかなニュアンス」を調整するもの。
公式にもレビューサイトにも説明が見当たらないので、各パターンの特徴を表にしました。
| フィルター名 | 特徴・聴こえ方の傾向 | おすすめの理由 |
| Low Latency Fast | 音の立ち上がりが速く、メリハリの効いた明瞭な音になります。 | ボーカルの**「子音」や「ブレス(息遣い)」**をくっきり立たせたい時に最適です。現代的なポップスやハイテンポな曲で、声が埋もれず前に出てきます。 |
| Low Latency Slow | エコー(余韻)を最小限に抑え、元の音を忠実に再現する設定です。 | 最も自然で滑らかな質感になります。ボーカルの「生っぽさ」や、過度な色付けのない素直な声を聴きたい場合に最適です。 |
| Phase Compensated Fast | 位相を整えつつ、高域までしっかり伸ばす設定です。 | 音場(ステージの広さ)が整理され、スッキリとした見通しの良さが生まれます。録音状態の良い楽曲で、透明感のある高音を楽しみたい場合に適しています。 |
| Phase Compensated Slow | 位相を補正しつつ、エコーを抑えた設定です。 | 「Slow」系の特徴である滑らかさを持ちつつ、定位感(声の位置)がはっきりします。しっとりとしたバラードなどに合います。 |
女性ボーカルをより魅力的に、あるいは自然に聴きたい場合、以下の2つが特におすすめ。
- Low Latency Slow
- Phase Compensated Slow
残りの2つは、どちらかというと「音のキレ」や「迫力」を重視するタイプ。
- Low Latency Fast
- Phase Compensated Fast
活用のヒント
SR35のフィルター変化は非常に繊細で、イヤホンやヘッドホンの特性によっても感じ方が変わります。
- まずは 「Low Latency Slow」 で聴いてみてください。
- 「もう少し声の輪郭をはっきりさせたい」と感じたら 「Fast」系 に。
- 「もっと広がりや奥行きが欲しい」と感じたら 「Phase Compensated(位相補正)」系 を試すのがスムーズな探し方です。
また、SR35は「Quad DAC」モードにすると中低域の厚みが増し、ボーカルがより実体感を持って聴こえるようになります。フィルター調整と合わせて、ぜひ 「Quad DAC」をオン にして楽しんでみてください。
SR35は多くのヘッドフォンを鳴らせる
余裕ある駆動力を誇るA&norma SR35。
本機の機能である「2段階ゲインコントロール」は、上位モデル(KANNシリーズやA&ultimaシリーズ)で培われた技術をコンパクトなSRシリーズに初めて本格導入した、非常に重要な設計要素です。
その特徴と設計の狙いを3つのポイントで解説します。

1. 「新世代アンプ技術」による高出力化
SR35には、フラッグシップモデルの開発で得られた**「新世代アンプ回路」**が搭載されています。これにより、以前のモデルよりも大きな電流を効率よく処理できるようになりました。
- 出力の強化: ゲインを「高(High)」に設定すると、バランス接続時で6Vrmsという、このサイズからは想像できないほどの高出力を叩き出します(ノーマルゲインは4Vrms)。
- 駆動力の確保: 今回お使いのPARAのような「鳴らしにくい」平面駆動型ヘッドホンでも、音が痩せることなく、余裕を持ってドライブできるように設計されています。
2. ノイズを抑え込む「TERATON ALPHA」の恩恵
一般的にゲイン(電圧)を上げると、同時に「サー」というノイズ(ホワイトノイズ)も増えがちですが、SR35はAstell&Kern独自のサウンドソリューション**「TERATON ALPHA」**を採用しています。
- 高S/N比の維持: ゲインを上げてもノイズを極限まで抑え込み、**130dB(バランス時)**という驚異的なS/N比を実現しています。
- 設計の妙: 「ただ音を大きくする」のではなく、電源の供給から増幅までをトータルで制御することで、高ゲイン時でも音の透明感を失わないのがSR35の強みです。
3. 多様なデバイスへの「適応力」
この2段階ゲインの最大の目的は、1台のプレーヤーで「繊細なイヤホン」から「重厚なヘッドホン」までを完璧に鳴らすことにあります。
- ノーマルゲイン: 感度の高いIEM(イヤホン)向け。微細なボリューム調整が可能で、ノイズを一切感じさせない静寂を重視。
- ハイゲイン: PARAのようなヘッドホンや、インピーダンスの高い機器向け。音の押し出しとダイナミックレンジを最大化。


私はMoonDropのヘッドフォンを所有してますが、特にPARAを愛用してます。
SR35のゲイン設定は「高(High)」にして使ってます。
凄く元気で良い音を出してますので、SR35は電気を食うPARAでも余裕で鳴らし切れています。
PARAのような平面駆動型は「音の芯」を出すのが難しいのですが、この新しいアンプ設計が高い制動力を発揮し、キレの良い音を鳴らします。
MoonDropのPARAはインピーダンスが8Ωと極めて低く、感度は101dB/Vrms(電力換算すると約80dB/mW程度)とかなり低め。
2.5mmの4.4mmのバランスケーブルが使える
SR35は、2.5mmの4.4mmのバランスケーブルが使えるところがポイント高かったです。
私が以前使用していたDAPは2.5mmのバランス接続だったので、古いケーブルを変換アダプターなしで活かせるところがよかったのです。


接続しているバランスケーブルはHeadCOAX。HeadCOAXは比較的スッキリした寒色〜中間寄りの音。
「単結晶銅のLitz構造」 と 「高純度銀入りはんだ」 を採用しているMoonDrop製Atamiに変更してみたい。
HeadCOAXよりも少し音に温かみ(ウォームさ)が加わり、中高域がより滑らかになる傾向が期待できる。
まとめ
圧倒的な声の質感: 歴代の名機(SR15/SR25)から続く「中域の美しさ」を継承し、目の前で歌っているようなリアルな距離感と艶が評価。
Quad DACによる密度感: 4基のDACを活かした濃密な音像が、女性ボーカルの繊細な消え際やブレス(息遣い)を鮮明に描き出します。
静寂が生む透明感: 独自の「TERATON ALPHA」技術によりノイズが極限まで抑えられ、澄み渡るような高域の伸びを実現。PARAのような解像度の高いヘッドホンで聴く際、その「透明度」が満足度の決め手となりました。
SR35は、是非ともバランスケーブル接続で試してほしい素晴らしい機種でした。
私はFiioの新しい機種なんかも使ってみたいのですが、SR35に大変満足しているので暫くは使い続けそうです。


















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